妖しく、切なく、懐かしい 感涙のあやかし譚 『夏目友人帳』。
独特の空気感をもつこの作品を、より妖しく、より切なく彩る劇伴の
収録が行われました。作曲は「学園アリス」「BACCANO!」など数々の
作品を手がけた作曲家であり、ピアニストの吉森信(よしもりまこと)氏。
今回注目していただきたいのは、全ての音が実際の楽器で奏でられている
ということです。ギターやパーカッションはもちろんのこと、三味線のよ
うな和楽器やハープまで、実際に奏者さんがスタジオに入って楽器を演奏
しています。
さらに今回は非常に珍しい楽器が使われています。一つ目は口琴という楽器。
ビールの栓抜きのような形をした楽器で、外枠の広い部分を左手で持ち、狭く
なっている先の部分を口で固定して、中心に通っている弁を右手で弾くと
「びぃーん」とバネのような音がします。口の形や息遣いなどを変化させる事
によって様々な音を出す事ができる楽器です。
もう一つは、なんと、人の喉です。“ホーメイ”と呼ばれる南シベリアトゥバ
共和国に伝わる喉歌、倍音唱法で、「一人二重唱」などとも呼ばれ、もともと
声に含まれている倍音の高音部を声帯の力で意識的に強調させて口笛に似た音
を出し、美しい倍音を紡ぎだします。どちらも独特な音を作り上げるために吉
森さんが集めたものです。
例え1曲でしか使わない楽器ですら取り寄せ、プロの奏者によって音を紡ぐ。
また、求める音を自然な音で作り上げるために様々な音源に着目して、挑戦す
る。そこには吉森さんの「生の音」にこだわる姿勢が表れています。そして、
劇伴の1曲1曲に、生の音ならではの振動が伝わってきそうな迫力や、味のあ
る音の揺れがあり、夏目友人帳の何ともいえない独自の世界観を表現している
のです。
また、ピアノは吉森さんご本人の演奏。
夏目友人帳を「美しい話」と評した吉森さんの描く夏目友人帳のイメージが、
音の細部まで行き届きます。さらに、他の奏者の方も演奏に入る前に夏目友人
帳のコミックスを読み、「心が洗われた!」と口々に言いながら、演奏ブース
に入っていく姿をスタジオで見ることができました。作品同様、劇伴も世界観
を大切にして丁寧に作られているのでした。
劇伴はメインテーマをはじめ、ゆったりとしたやさしい曲調のものが多いです
が、ところどころに一転した曲調のものが現れて、夏目やレイコの孤独、妖と
いう異質な存在を表しているよう。劇伴全体で夏目友人帳の世界が見事に描か
れている「夏目友人帳音楽集」をお楽しみに!
広島県出身。ピアニストおよびキーボーディスト、作曲、編曲家。関西周辺のライブハウスで活動後、「モダンチョキチョキズ」のメンバーとして東京へ進出。
その後「ヒカシュー」や鍵盤ハーモニカのみのアンサンブル「P-ブロッ」など多種多様なバンド、セッションで、現在も都内のライブハウス「ジロキチ」等
あちらこちらで活動中。近年は、ミュージカル「オケピ!」「フロッグとトード」等での演奏や、TVアニメ「学園アリス」「恋風」「バッカーノ!」等の作曲編曲など、創作も多数。
【吉森信オフィシャルHP】 http://yoshimori.ciao.jp/
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